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ビジネスとしてドローンを始めるには

いま話題のドローンを導入したいけど、どこから手をつけたらよいか、何から始めたら良いのかわからない、という人は多いと思います。ローエンドの空撮業務であれば、とりあえずDJIの機体を購入して国交省に登録すれば誰にでも始められますが、それ以外の用途では、どのようなアプリケーションがあり、どのような機材やソフトウェアの選択肢があるのか、解説したいと思います。

そもそも、ドローンで何ができるの?

普通、ドローンと言えば、プラットフォームとしてのドローンを指します。パソコンに例えると、パソコン本体とOSがドローンです。

パソコンでWebをみる場合にブラウザが必要だったり、文書を書く際にワードプロセッサが必要なように、ドローンを使って何か役に立つことをするには、特定の問題解決に特化したアプリケーションが必要です。

もっとも身近なドローンアプリケーションといえば空撮ですが、DJI等のホビー用のコンシューマー向けドローンには空撮カメラのハードとアプリがプリインストールされています。もちろん、コンシューマー向けドローンでは、使えるカメラが限られているので、プロ用のカメラを搭載できるプロ用の空撮ドローンが存在します。

その他のプロ向けドローンでは、測量用のレーザーレンジファインダーセンサーや、農業用のマルチスペクトラムカメラが搭載されていたり、荷物を運ぶためのペイロードベイが備わっており、センサーをフライトと連携して動作させたり、収集したデータを処理するためには専用のアプリケーションソフトウェアが必要になります。

業務用ドローンアプリケーションの種類

利用用途

現在、世界的にドローン利用率が高いのは農業ですが、伸び率が高いのは、マイニング(鉱山)、インスペクション、石油・天然ガス等です。特に、1フライトあたりのエリア面積は、石油・天然ガス業界が突出しています。

国内でも、これまでは農業が80%、残りは検査と空撮でしたが、分野としては、農業用途が相対的に減少、測量、検査、空撮などが伸びると予測されています。

また、これらのメジャーな分野以外でも、それぞれのマーケットニーズに特化したロングテールのヴァーティカルアプリケーションが日々考案され、続々と利用が始まっています。

空撮

一言で空撮といっても、Phantomなどのローエンドコンシューマー機に標準装備されているカメラののっぺりとした絵でも間に合うようなものから、一眼レフカメラを載せたミドルエンド、映画やドラマ等の撮影で使用される業務用大型カメラとシネマレンズでしか得られない解像度とツヤのある絵が要求されるハイエンドな撮影まで様々です。動画だけではなく、静止画の需要もまだまだありますが、こちらは一般的に一眼レフが使用されます。

映像・画像コンテンツ以外にも、交通事故の保険処理における現場状況の撮影など、用途は広がっています。

通常、映像コンテツの空撮を行う場合は、機体を操作するパイロットと、カメラやジンバルを操作するカメラオペレーターの最低2名が必要です。

空撮関連機器

カメラ

業務用空撮ドローンでは、一眼レフ、高級コンデジ、業務用ビデオカメラが使われます。業務用ビデオカメラでも、RED等の大型カメラだけでなく、マイクロフォーサーズ規格のレンズが使用可能で小型軽量、かつ遠隔でほぼ全ての操作が可能なBlackMagic Micro Cinema Camera等が出てきていますので、それほど大きな機体を用意せずとも、質の高い画が撮れるようになってきました。

ジンバル

ドローンは機体を傾けることで水平方向に移動しますので、カメラをフレームに直接取り付けてしまうと揺れてしまって全く使えない映像になってしまいます。そこで、カメラをブラシレスジンバルに載せて、機体の揺れを伝えないようにしつつ、機体の向きとは関係なくパンやチルト操作ができるようにします。ジンバルのマウント部分にシリコンゴムなどを挟むことによって、モーターやプロペラの振動が伝わって、いわゆるJello(こんにゃく)状態になることを防ぎます。

FPV送受信機

日本では他国で映像送信用に一般的に使われている5.8GHzの電波帯が、アマチュア無線免許でしか認可されておらず、業務では使えないため、1.2GHzの高価な機材と免許を使用するか、2.4GHz帯RC送信機との混信を覚悟の上でLightBridgeやWiFiなどの2.4GHz帯の機材を使うしかありません。携帯網の空中使用が解禁になれば、ある程度は解消されるかもしれませんが、山間部などではまだまだ圏外のところも多いので、早急な電波法改正が望まれます。

測量

一言で測量と言っても地図を作成するための測量から、鉱山の露天掘りで掘り出した鉱物の量を測ったり、建築現場などで建築資材の山を3D化して体積を算出したり、ビルや橋脚などの建造物をスキャンするなど、さまざまな用途があります。

また、技術的にも、画像センサーを使う方式と、レーザーレンジファインダーを使う方式の2種類があります。

画像センサー方式

ドローンに搭載したカメラを地表に向けて撮影し、撮影時のGPS座標と高度、機体の傾き等を元に画像処理を行って2Dマップデータ、または、3Dデータに変換します。

Photo Stiching

スティッチングは、文字通り複数の画像から重なり合う同じ地表のポイントを検出し、縫い合わせることで比較的容易に平面のマップを作ることができます。ただし、カメラの傾きやレンズの歪みを補正しないため、不正確なマップになってしまいます。

Orthomosaic

スティッチングでは、地表が平面で、真上から垂直に安定して撮影できる場合には有効ですが、前述のように起伏がある場合や建造物がある場合、カメラが傾いている場合には誤差が生じてしまいます。ですので、正確な3Dマップを作るためには、オーバーラップを多めにとった大量の写真から、Orthorectificationという補正プロセスを経て、一旦3Dや2.5D空間にマッピングしてから、Orthomosaic (Orthophoto)という一枚の巨大な平面マップに投影出力します。これはグーグルマップ等で衛星写真をつなぎ合わせて地表マップを作るプロセスと似ています。地表からカメラまでの距離、傾き、レンズの歪みなどを補正してから3D化し、写真を3Dテクスチャーとして縫い合わせますので、距離の測定にも使用可能な正確なマップが作成可能です。出力データは2D画像と2.5D画像(後述)形式があります。

DSM (Digital Surface Model)

DSMは、いわゆる2.5Dのデータです。平面マップ上の各ポイントXY座標に高さを加えたもので、横や斜めからみた高低差は表現されず、完全な3Dデータではないため、2.5Dと呼ばれています。密度の高い等高線地図のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。

Point Cloud, 3D Texture Mesh

2D画像ベースの測量データから、3Dの立体マップを作ることもできます。これはステレオカメラから奥行きを検出する場合と似たプロセスで、画像間の差分から立体モデルを算出する方式です。複数のアルゴリズムがあり、それぞれメリットデメリットがあります。

画像セットから抽出した3Dデータは、Point Cloudデータとしても3Dテクスチャーメッシュとしても出力可能です。

Point Cloudは、日本語では点群と呼ばれ、座標データだけですので、テクスチャーはありません。

3D Texture Mapは、身近なところではAppleのMapアプリで、幾つかの都市全体が3Dメッシュ化されて表示されるのをご存知かと思いますが、基本的にはあれと同じです。というか、Apple Mapのデータも航空機で空撮した画像から生成されています。

レンジファインダー方式

LiDARとはレーザーレンジファインダー(レーダー/RadarはRadio Detecting and Rangingのアクロニムで、ライダー/LiDARはLight Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Rangingのアクロニム)のことで、レーダーがマイクロ波の電波を使うのに対し、LiDARはレーザー光を使って測定します。一般的には赤外線半導体レーザーを使って、物体に照射したレーザーパルスが反射して戻ってくる時間を測定することで距離を測ります。マイクロ波を使うレーダーに比べて、波長が非常に短く、収束度も高い上にレーザーの特徴であるコヒーレントな光を使用するため、小さな対象物まで非常に正確に測定することができます。LiDARで使われるレーザーにも検出対象物や環境に合わせていろいろな特性をもったものがあり、例えば、水中ROVでは、水に対する透過性の高い波長のレーザーが使われます。

測量には360度回転式や180度等の首振り方式のユニットが使われます。画像ではなく、あくまでもセンサーから地表の物体までの距離を一秒間に何百、何千ポイントとサンプリングし、Point Cloud (点群)データを直接取得します。画像センサーはなく、距離のみを測定するため、物体の形や大きさをより正確に算出することはできますが、出力されるデータにテクスチャーはありません。

高精度農業

よく「精密農業」と間違って直訳されていますが、Precision Agricultureとはそもそも、作物の生育状況等をドローンを使って空から測定し、収集したデータを解析し、最終的には天候や相場予測なども含め、水、肥料、農薬の散布量を最適化する農機具をコントロールしたり、出荷時期を調整したりすることで、農業における全ての過程で情報精度を高め、リソース(土、水、肥料、農薬)を温存しつつ、最小のインプットで最大のアウトプット(収穫高)を得ることを目的とする意志決定サポートシステムと、それを具体的な生産性の最大化、効率化につなげる技術群と手法の総称です。

例えば、80年代に考案されたフィトジオモーフォロジー(Phytogeomorphology)という、作物の育成に地形的特徴が与える影響を解明する学問があります。これは、畑の一角だけ育成率・収穫高がよい箇所があったので調べたところ、もともと小川が流れていたことが判明したことから始まったものです。近年、安価で正確なGPSやLiDARといった位置情報や地形情報と共に、葉緑素レベル、窒素含有量、有機物量、水分量、酸性度、発育状況をモニターできるマルチスペクトラムカメラや可視光外センサーといった技術革新により、安価かつタイムリーにNDVIマップ等の作成が可能となったため、特に大規模農業においてはコスト面でメリットがではじめています。

今はまだセンシング、つまり入力側と、散布等の出力側が連携していませんが、観測側の技術だけでなく、アウトプット側の機械の進歩により、GPSデータと重ね合わせ、ピンポイントで種まきから、肥料や農薬の吐出・散布量までを細かく調整する「可変レート技術」と組み合わせ入力側と出力側の両方を自動化することにより威力を発揮します。いわば、対象となる土地と作物に最適化された「レシピ」、「処方箋」を作成し、実際の処方まで自動化するものです。

農業におけるドローン活用のフロー

データ収集&視覚化

  • マルチスペクトラムアナライザー、NVDI、3Dマッピングを駆使し、リモートセンシングにより効率的に農業を営む上で意思決定に必要なデータを収集
  • 区画内、区画間の作育状況の違いを観察&測定

意思決定サポート

  • 収穫逓減の法則(law of diminising returns)に従い、もっとも効率のよい資源投入を可能に
  • 必要な時に、必要な場所へ、必要な量を(製造業のjust in timeと同様のコンセプト、業務フロー効率化ノウハウを農業にも)
  • 複数年に渡るデータを比較することで、外部要因を除外した、より正確なデータとトレンド情報を蓄積

作業効率化(Precision Agriculture/Precision Farming)

  • VRT(可変レート技術)を使ってピンポイントでリソースを投入
  • イリゲーション(irrigation = みずやり)、追肥、ダスティング(受粉)、スプレイイング(農薬散布)を必要なところに必要な量だけ行うことで労力、材料費、人件費を削減しつつ最大限の収穫量を確保

収穫高予測の高精度化

  • 現状を正確に把握し、過去のデータと比較することで、収穫高をより正確に予測
  • 市場価格のボラティリティーに対抗し、下流の加工、流通工程におけるリソース配分を最適化し、利益を最大化することが可能に

災害対策(Disaster Prevention)

  • 農薬、化学肥料の使用量を最小化しつつ、作付け面積全体への病気拡大や、雑草、その他害となる植物繁殖を防ぐことが可能に
  • より安定的な有機農業へのシフト

農業用ドローンアプリケーション

スカウティング

農場をHDビデオ撮影するだけですが、短時間で広大なエリアをカバーでき、問題のあるエリアをピンポイント特定できるので毎日巡回する必要がなくなるので大規模農場ではこれだけでも十分に効果があります。ただし、農家あたりの作付け面積が狭い日本では、作業者が十分な頻度で巡回できるので、北海道以外の地域ではあまり効果は期待できません。

データ収集&視覚化

作物の生育状況をモニタリングする場合、一般的にマルチスペクトラム(マルチ分光カメラ)が用いられます。これは可視光や近赤外線を波長ごとに分離し、より正確な色や波長ごとの輝度を測ることができます。もともとは衛星写真の解析に使われていたNDVI (Normalized Difference Vegetation Index)という植物の分布や生育状況を調べる指標を、ドローンによって安価、タイムリー、かつ高精度で取得できるようになったため、農業に持ち込まれたものです。

VRT

最近の農機(トラクター、コンバイン等)には、VRT(可変レート技術)が搭載されてきており、今後は、ドローンによって作成した「処方箋」を元に散布区域を限定したり、自動で散布量を調整するシステムが伸びるでしょう。

マッピング

農場のマッピングにはDroneDeployやPix4D等の専用アプリ・サービスを使った、Orthomosaic(複数の写真を自動でつなぎ合わせ、位置情報とともに地図データ化)処理の自動化が進んでいます。

保険処理

アメリカでは、日本の農協にあたる組織ではなく、AIGやAll Stateといった一般の保険会社による出来高に対する保険制度が確立しており、天災による被害範囲と被害程度を正確に把握し保険適用額を算出する際にドローンが利用されています。

散布

日本では何十年も前からYamahaのRMAXなどのヘリコプターを使ってトラクターが入りにくい稲作を主に散布を行ってきましたが、積載量が10kg~20kgと少なすぎ、海外の大規模農場の広大な畑面積には対応できていません。

国内でもっとも普及しているのはヤマハのRMAX・FAZERシリーズで、登録台数約3000機、年間販売台数約3百機ですが、価格はオプションにもよりますが1〜2千万円、年間数百万円のメンテナンスコストがかかります。 全国の散布ヘリコプターの登録オペレーター数は約1万人おり、一つのエコシステムが出来上がっています。

散布できる農薬は、「産業用無人ヘリコプター用農薬」指定品のみで、それ以外は散布禁止です。

ヤマハによると、国内の水稲面積の35%以上(約100万ha)はヘリで散布されているそうです。農水省は今後空中散布の実施面積を2019年までに20%程度(約20万ヘクタール)増加させたいとしています。また、平成26年4月に航空機製造事業法の無人ヘリコプター重量規制緩和され、最大重量が100kgから150kgになりました。

ちなみに、ヤマハヘリの年間事故率は10%、つまり登録台数の10%が墜落事故を起こすということです。原因は主に電線接触だそうです。

ヤマハ以外でもDJIや他のメーカーが電動マルチコプターの散布機をだしていますが、燃料を追加すれば1日中飛ばせるエンジン機と違い、バッテリーを大量に購入しない限り、狭い面積の散布にしか対応できません。また、散布専用機として販売するには、農林水産航空協会の産業用無人ヘリコプター技能認定証が必要です。

水産業

農業だけでなく、水産業でもドローンの活用が始まっています。水生生物全般の生態観察、海洋生物の生息環境観察、遠洋漁業の魚群探知、養殖設備の監視、ダム建設がサケ遡上に与える影響の環境アセスメントなど、用途は様々です。

また、間接的な利用として、違法操業や密猟者の監視を通じて資源保護、サステイナビリティー向上に貢献している例や、スポーツフィッシングで、空から魚群探知して、根掛かりしそうな水生植物密集地を避け、魚のいるところにピンポイントで仕掛けを落とす、などの応用例もあります。

林業

林業におけるドローン利用は、山火事監視、消火、リサーチ、違法行為監視、森林の健康状態監視、山焼きなどがあります。

もっとも活用が進んでいるのが、LiDARを使った森林・山林マッピングです。山の地形だけでなく、生育状況の把握や山林の資産価値評価、課税のための木材資産在庫(インベントリー)管理も可能です。

海外では、プランテーション全体の健康状態把握や再生種分析、下草生育状況把握、違法伐採等の監視、伝染病や害虫等の拡散監視と早期対応、嵐や山火事の後の迅速なダメージ評価などにも使われているようです。

コスト削減の事例としては、例えば、1,000 haの山林を測量するのに、これまで20人で1ヶ月かけて山に入り、100箇所のサンプルデータを手作業で取得していたものを、同じ面積を1回のフライトでカバーし、得られたデータを数日で処理することが可能になるとのことです。また、これまでは目測による概算値だったキャノピー高度もより正確に算出することが可能になるそうです。

災害対策

火山噴火、津波、洪水などの天災発生時のモニタリングを遠隔地から安全に行えます。

また、携帯通信地上基地局等が損壊した際に通信中継を行うことも可能です。

捜索・救助・救援

遭難者の捜索、監視もドローンの可能性が高い分野です。

今のところ技術的ハードルが高く、まだ現実的なソリューションは出てきていませんが、複数機を同時に飛ばすことで広範囲を短時間でモニタリングでき、悪天候で実機が飛べない場合や、地形的にたどり着くのが難しい場所でもドローンであれば2次災害のリスクを抑えて捜索を継続し、発見できた場合には水や食料、毛布などの救援物資やサバイバルキット、医薬品等を届けることも可能になるでしょう。また、水中ROVやローバーを使って沈没船に取り残された人や、落盤で閉じ込められた人に、救助がたどり着くまでの間のつなぎとして酸素ボンベや食料などを運ぶ構想もあります。

遭難者の捜索等で通常のカメラによる目視捜索が難しい場合、赤外線域のみを測定するカメラや、温度測定に特化したサーマルカメラを使用し、遭難者体温を検出したほうが効率がよいこともあります。これは環境モニタリングで動物の行動範囲を追跡する場合も同様です。

環境モニタリング・サーベイ

環境調査等には、可視光カメラや赤外線やサーマルカメラが使用されます。こちらも野生動植物の観測、交通量の監視、海岸線や河川の侵食度合の監視など、用途は様々です。

ロジスティックス(物流)

Amozon等が研究したり実証実験をしているので比較的有名な配達用のドローンですが、いわゆる物流系のアプリケーションは安全面や条例等の制約が多く、現時点では血清などのスピードが鍵になるものや、救急用品等の比較的軽量なペイロードを、地上からではアクセスしにくい山間部や離島などの遠隔地に運んだり、遭難者や災害時に孤立している集落に運ぶ、といった限定されたアプリケーションが最も現実的です。

物流をドローンで行う意義は、いわゆるラストマイル・ラストヤード問題(配送センターから受取人までの間がもっとも人件費とコストがかかり環境負荷も高い)と、オンラインショッピングの普及によって消費活動のうち物流が占める割合が右肩上がりになってしまうという、同じルーツの2つの問題を一気に解決できる可能性があるからです。人口が密集している上、宅配ボックスの設置さえままならない日本では前途多難が予想され、空を飛ぶUAVよりも、地上配達車の自動化のほうが可能性が高いと思われます。

対して、コンシューマー以外の市場では、工場、倉庫における物流の自動化はすでにものすごい勢いで進んでいます。

検査

主に橋脚、トンネル等のインフラ・構造物の検査に用いられます。検査方式は様々で、カメラによる目視検査から、打音検査のような特殊な装置が必要なものもあります。

ドローンアプリケーションまとめ

このように、一言でドローンと言っても、様々な業界で多種多様なアプリケーションが存在します。空撮だけがドローンではなく、今後はこういった分野やアプリケーションに特化したビジネスが伸びてゆくでしょう。

ドローン機体

一般的に、ドローンというとマルチコプター、特にクワッドコプターを連想する人も多いかと思いますが、ドローンはマルチコプターだけではありません。固定翼機(飛行機)、ヘリコプター、VTOL(垂直離着陸固定翼機)、飛行船、作業車両、運搬車両、トラクター、ボート、潜水艦等々、遠隔操作・自動運転可能なヴィークルは全てドローンと言えます。

マルチコプターは構造が単純で部品点数が少ないため手軽ですが、重い荷物を持ち上げられない、滞空時間や航続距離が短い、風に弱い、などの弱点がありますので、用途に応じて最適な機体を選択することが重要です。

機体形式

マルチコプター

マルチコプター

ヘリコプター

ヘリコプター

VTOL

VTOL

その他のフレーム

  • 固定翼機(飛行機)
  • ローバー(4輪車、キャタピラ車)
  • ボート
  • 水中ROV(潜水艇)

機体サイズ

マルチコプターに限っても、用途、ペイロード(荷物)、滞空時間等によって、様々なサイズがあります。レース用のクワッドコプターは180~280サイズ(対角線上にある1対のモーター間の距離が180mm~280mm)が主流ですが、プロ用の空撮機では1,000mmを超えるものも多くあります。

ヘリコプター、VTOL機などに関しても、ペイロード、滞空時間とサイズ、重量はトレードオフの関係にありますので、用途に最適な機体を選ぶ必要があります。

フライトコントローラー

業務用ドローンのフライトコントローラーは、オープンソースのPixhawk系フライトコントローラーがデファクトスタンダードになっています。

DJIのFCもSDKという形でカスタムアプリケーションを書けるようになってきてはいますが、カスタマイズ可能な範囲は非常に限られており、また、マルチコプター以外のフレームにはそもそも対応していません。

初期投資額

コンシューマー用ドローンは数十万円で一式揃えることができますが、業務用ドローンは数百万円〜1千万円を超えるものまで様々です。

価格の違いは、信頼性やサポートの有無もありますが、そもそも業務用のソリューションはコンシューマー向け商品のように何万台も売れることはないので1機あたりのコストは高くなります。その代わり、ビジネス上の問題を効率よく解決できるため、費用対効果が高く、購入する側も単価の高い仕事が取れるようになったり、既存業務をドローンで行うことで大幅に経費削減ができるので、結果的にすぐに元がとれる、という価格構造になっています。これは業務用のソフトウェアや機器と同じ仕組みです。

例えば、10万円少々で買えるDJIの機体があれば誰でも参入できるローエンドの空撮業界は価格競争が激しく、みんな横並びで同じ機材を使うので、同じ地域の同業者と差別化できず、なかなか食べていくのは難しい状況になっていますが、測量用の機材を持っている業者はまだ少なく、許認可等、参入障壁も高く、従来の方式ではコストがかかるため、普通の空撮業務と比べた場合、比較にならないほど単価が高止まりしたままです。

ただし、業務用の機体は高価なだけでなく、取り扱いやメンテナンスも難しく、参入障壁もリスクも高いので、先行投資に見合ったビジネスを組み立てられない場合は、無理に購入しない方がよいでしょう。

消耗品・メンテナンス

バッテリー

電動ドローンに使われるリチウムイオン(Li-ion)、リチウムポリマー(LiPo)、リチウムフェライト(LiFe)は、スマホやノートパソコンのバッテリーと同じで、全て寿命があります。また、使用や保管に気を配らなければ、内部の酸化が進んでしまい、さらに寿命が縮まります。LiPoは特に過放電や過充電、満充電のまま放置したりするとあっという間に性能が下がって電池が持たなくなります。

プロペラ

ドローンを飛ばす上で、スペアのプロペラは必要です。運搬時や離着陸の際に少しでも傷が入ってしまったプロペラは、飛行中に折れたり、振動による墜落の原因となりますので、消耗品と割り切って必ずバランスをとったプロペラと交換しましょう。

特に大型マルチコプターの折ペラやヘリコプターのメインローターは、あらかじめバランスをとってあるプロペラをペアで購入するか、プロペラバランサーを購入して自分でバランスをとることで初めて安定した飛行が可能になります。

モーター・ESC

構造が単純なマルチコプターでも、モーターやベアリングの寿命に気を配る必要があります。メーカーやモデルによって違いはありますが、設計寿命を超えて運用すると墜落につながりますので、業務で使用するのであれば、メンテナンススケジュールを組んで、定期的に点検、交換が必要です。また、一度オーバーヒートしたコンポーネントは、著しく性能と信頼性が下がりますので、モーターもESCも熱が入ってしまったら交換したほうが良いでしょう。

予備機

ドローンを業務で使う場合、現場でトラブルが発生しても依頼された業務を遂行できるように、メインとサブの最低2台は現場に持っていくのが普通です。さらに、予備のバッテリーやプロペラ、風速計、バッテリーチェッカー、GCS用のパソコン・タブレット、最低限の工具も必要になります。

故障・トラブルシューティング

ドローンが故障した場合や動作がおかしい場合は、普段からDIYでラジコンキットを組み立てて飛ばしている、というようなユーザー以外は、専門の業者に修理を依頼したほうが良いでしょう。特にフライトコントローラーはよくわからないまま設定を変更すると墜落の原因になります。

ログ解析

トラブルシューティングには、フライトログの解析が必要になることが多いので、機体側のフライトコントローラーからPCへログをダウンロードする方法やログ解析の方法を覚えて、フライト後は日常的にログをチェックするようにしましょう。毎日眺めていると、不具合の前兆も見えてくるようになり、事前にトラブルを防ぐことができます。

ソフトウェア・アップデート

一般的には、メーカーが提供するアップデートであっても、緊急性がないかぎり、リリース後数日〜数週間様子をみて、不具合が出ていないかネットで情報を確認してからアップデートしたほうが良いでしょう。

その他

トレーニング

ドローンのプロパイロットとして活躍している人はRCヘリコプターを操縦できる人が非常に多いです。少なくとも、空撮ビジネスを始める前には最低限のフライトトレーニングが必要です。日課として必ず毎日飛ばしている人も多いです。GPSによる自動航行が前提のサーベイ等でも、万が一の際にはマニュアル操作で着陸させることになりますので、やはり最低限の飛行技術は必要です。上達への一番の近道は、RCヘリコプターで練習することです。

保険

業務でドローンを飛ばす場合は、ドローン保険に入りましょう。

許認可・申請

大型機を人口密集地などの制限区域で飛行させる場合は、国交省への事前登録・申請が必要です。また、電波法や技適マークも必ずチェックしましょう。